空色幻想曲

†熱視線と甘い誘惑†

Lute side
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 騎士に就任して早一週間。
 だが、平和な王宮でその役目を発揮する場面はほとんどない。

 城の構造やしきたり、騎士のたしなみなど、戦闘以外のことを覚えるのが精いっぱいで、まだ「空姫親衛隊長になった」という実感さえ湧いていなかった。
 いや、実感どころか……

「何が悲しくて護るはずの(あるじ)から逃げ回らなければならん……」

 (こずえ)の上で空に向かってポツリと愚痴(ぐち)を零した。

 無数に重なる緑の隙間から覗く空色は、小さな愚痴など簡単に吸い込んで溶かしてしまうほど澄んでいる。

 癒されるような青さが、今日はなんだか恨めしい。

 ここは城の敷地内で、王宮のすぐ北に位置する森の中。
 溢れる清浄な光。
 清廉な空気。
 女神の加護を強く受けるこの森は『聖地(せいち)』と呼ばれ、邪悪な魔物の侵入を阻む。

 人も来ない。いるのは小動物のみで、鳥のさえずりが聞こえる以外は至って静かだ。
 休憩時や職務の後はここに入り浸り、木に登ってのんびり空を眺めるのが、俺の日課となりつつあった。

 単にこの場所が気に入ったから……というだけではない。
 今、王宮にいては何かと面倒だからだ。
 それには深いようで浅い事情があった。

 さかのぼること、三日前──
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