空色幻想曲
 じっとしていたら今にも瞳から熱いものがこぼれそうだった。

 ごまかすように自分のハーブティーに口をつける。こみあげてくるものを抑えようと必死で息を止めていたから、せっかくのお茶の味がよくわからなかった。
 けれど、のどから流れるやわらかなぬくもりが、目のはしにたまった熱いきもちをゆるやかに落ちつかせてくれた。

「じゃあ、そろそろ失礼します。また来ます。お母様」

 ハーブティーを飲み終えて談笑もそこそこに椅子から立ちあがると、途中で呼びとめられた。

「あ、待って、ティア。帰る前にお茶のおかわりを淹れてもらってもいいかしら? とても美味しかったから、また一人でゆっくり飲みたいの」

「ホント!? わかったわ、お母様。おやすい御用よ!」

 思わぬリクエストに、さっきの湿っぽい空気などカラカラに乾いてしまった。我ながら単純。

 ──こういうのもお母様の気遣いなのかな?

 鼻歌混じりに新しいお茶を作りながら、ふっと思った。
 だとしたら……

 やっぱりまだまだお母様には敵わない。

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