君の声が聞こえる
ボクとワタシのエピローグ
僕のエピローグ

(加藤睦月編)


月日が経つのは早いもので、あれから十八年という時間が過ぎた。

僕も四十代になって立派なおじさんの仲間入りだ。

十八年という年月の間に、良枝と僕との間に女の子が生まれた。

愛奈という良枝に良く似た女の子だ。十五歳になる。

僕は家族のために身を粉にして働いている。

そうする事が僕の家族に対する愛情だとでも言うように。

だけど、実を言うと、家族のために尽くすのは僕の罪滅ぼしなんだ。

僕はこの十八年間、一日も雅巳を忘れた事はなかった。

良枝は僕のためによくやってくれている。それでもどうしても僕の中から雅巳が消えない。

それは日に日に雅巳に似てくる雅樹の成長を目の当たりにしているからだろうか?

愛奈はそれを感じているようだ。女の子は敏感だから、僕が雅樹を特別視してしまう事を感じてしまうのかもしれない。

思春期の女の子は扱いが難しい。何かにかけて突っかかってくる娘の扱いに僕はかなり戸惑っていた。

雅樹には高校を入学する時に雅巳の事を話していたが愛奈には話していない。

それなのに、何かを感じているらしい娘は僕に何かというと「お兄ちゃんはお父さんにとって特別だもんね」という言葉を口にした。
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