世界で一番好きなもの。【短】
世界で一番好きなもの。







『…ねぇ、彰。今日何の日か知ってる?』




いつもと何ら代わり映えのない日常。


その柔らかく暖かい膝を枕にウトウトしていたときだった。



突然降ってきたその声に、俺はゆっくり瞼を持ち上げて、愛しいその声の主を見つめる。



「…花梨、ハロウィンのときと同じこと言ってる。」

『え?あ、ほんとだ。
…ってそうじゃなくて!』

「クリスマスイブ。」


少し拗ねた様に唇を尖らせ、不満げに俺を見つめてくる彼女に答えを告げれば、その目は少しだけ見開かれた。



その表情に、今度は俺が少しムッとなる。


前は何の日かわかんなかったけど、いくら俺でも今日が何の日かくらい解る。

12月24日、今日はクリスマスイブ。



……寧ろ、花梨は俺のこと何だと思ってんの?



『解ってたの!?』

「…失礼な奴。」



『じゃあなんで…っ。』



花梨は少し声を荒げたものの、そこまで言うとハッとした様子で口を閉じてしまった。



…何で、って…何が。




その言葉の真意を探ろうと、彼女の目を見つめる。

だけどウヨウヨと気まずそうに視線を泳がし、目を合わせない花梨に、俺は降参するほかない。



「花梨、言わなきゃ解んない。」


軽く咎めるような声を出せば、やっと花梨はゆっくり俺と視線を合わせ、小さく口を開いた。





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