Engagement Ring―かすみ草―×―ひまわり―
だけど兄貴は悟ってくれたらしく。
フッと笑われて頭に手のひらを乗っけられた。
ガキ扱いか。
また一人になって、思う。
……本当は俺が行ってやりたいよ。
どうした?大丈夫か?
そう言ってやりたいけど、生憎不自由な足とこの抜け抜けの記憶じゃ行きたくても行けない。
行ってやった所で、どうしてやる事も出来ない気がする。
無力。
昔の本城さんとの接し方すら忘れてんだから。
気になる、のに……。
「何で……」
なんで。
「思い出せないんだ……」
歯痒い思いだけが、募っていく。
全部の、今までの記憶を全て思い出したいなんて贅沢は言わない。
ただ、彼女との記憶だけで良い。
彼女との出会いから、俺がこうなるまでの記憶を、返して欲しい……。
よく分からないけれど。
彼女が、本城さんとのことが気になるんだ……。