Virgin Snow
「あたしっ……!」


澪さんはそれだけ言うと涙を流し、縋るように廉さんを見つめた。


「……だから、何なんだよ?」


「っ、妊娠……してるの……」


澪さんは泣きながら呟くように言って、廉さんの服の裾を掴んだ。


「「妊娠っ!?」」


あたしと嵐が声を揃えて驚いたのに対して、廉さんはしばらく黙っていた。


おめでたい事なのに、何故か緊張が走る。


あたしは嵐の手をギュッと握りながら、廉さんの言葉を待ち続けた。


「あたし……産みたいっ……!廉……お願いっ……!」


泣きながら懇願する澪さんは、もう既に“母親”の表情をしている。


しばらく黙っていた廉さんは、澪さんの瞳を真っ直ぐ見つめながらゆっくりと口を開いた。


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