Virgin Snow
「嵐……」


振り向いて嵐を見たあたしの瞳には、涙が溢れていた。


「こいつはまだ俺の彼女だよ!だから、返してくれる?」


そう言った嵐が、あたしの腕を掴んでいる高志君の手をパシッと払い退けた。


嵐は一応笑顔だけど、目が笑っていない。


本気で怒ってるっ……!


そう悟ったあたしは、嵐の顔を見る事が出来なかった。


「樹里、行くぞ!」


彼はテーブルにお金を置くと、あたしの手を握ってファミレスを出た。


「嵐っ!!嵐ってば!」


あたしがいくら呼んでも、嵐は振り返ってくれない。


それどころか、彼は返事もせずにあたしの腕を引っ張って足早に歩き続けた。


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