私の名前も呼んで


今朝も私はコタを連れていつもの公園を散歩し始めた。

もうだいぶ冬っぽくなってきたな。手袋をはめた手のひらを口元に持って行き、ハァ~と温かい息を掛ける。

今日も会えるかなぁ。
また"さくら"て声が聞けるかな。

期待に胸を踊らせ前を見てると、

えっ…?

少し遠いけど、目の前に見える光景に絶句した。

彼がキレイな女性と一緒に散歩している。彼が笑ってる。彼女なの…?

イヤ。イヤだよ。

私はその光景を見たくなくて、その場から走って逃げ出した。

遠くで一瞬「桜ちゃん?」て彼の声が聞こえた気がしたけど、

そんなハズないのにね。

様子の変な私をコタは不思議そうに見てたけど、走り出すとうれしそうに着いて来た。

彼の事は諦めなくちゃいけないの?

そんなのイヤだよ。
知らぬ間に涙が頬を濡らしてた。

彼に会うのはツラい。
次の日から私は散歩のルートを変えた。

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