レンズ越しの君へ
それから数日後、あたしはずっと疑問に思っていた事を尋ねてみる事にした。


「ねぇ……。そういえば、どうしてすぐに“澪”って呼んでくれなかったの?」


「ん?」


「元カノのせいじゃないんでしょ?」


コンクールで受賞したあの写真は、廉があたしを初めて抱いた日に撮っていた物。


それを知ってから、それまであたしの事を“澪”って呼ばなかった事が、すごく不思議だった。


「あぁ……。お前と出会った時から決めてたんだ。お前を初めて抱いた日に、絶対に澪を撮るって……」


「それで……?」


あたしは、ソファーに座る廉の隣に腰掛けた。


「あの写真がコンクールで受賞するまでは、お前の事は絶対に“澪”って呼ばないって決めてた」


「何よ、それ……。あたしはずっと不安だったのに……」


不機嫌に眉を下げたあたしの頭を、廉が優しく撫でた。


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