レンズ越しの君へ
電話越しの綾には表情は見えないけど、あたしは笑顔で返事をした。


「うん」


「どうしたの?」


電話口から聞こえて来る綾の声は、すごく穏やかだ。


昨日の今日だし、勘のいい彼女の事だから、きっとあたしの言いたい事がわかっているんだと思う。


何となくそう感じて、ゆっくりと歩きながら口を開いた。


「あたしね、店辞める事にしたんだ!」


「うん……」


綾の声が、少しだけ悲しげに聞こえる。


「今から店長に話しに行くから……。綾にだけは、先に言っておこうと思って……」


そう言った後、あたしは寂しいような悲しいような…


何とも言えない、複雑な気持ちになった。


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