レンズ越しの君へ
店に着いたあたしは、見慣れた豪華なドアの前に立っていた。


この時間なら、店にはまだ店長しかいないハズ。


深呼吸をしてから、ゆっくりとドアを開ける。


お客がいる時とは違う静かなホールを横切って、一番奥の部屋に続く通路を歩いた。


ここは事務室。


普段は店長や黒服達が使っている部屋で、基本的に女の子達はここには入らない。


この部屋に呼び出される時は、お説教かクビになる時くらい。


あたしも入店した当初は何度か呼び出されて、こっ酷く怒られたりもしていたけど…


最近はそんな事が無かったし、この部屋に来る事自体が随分久しぶり。


だから少しだけ不安で、中々このドアをノックする事が出来なかった。


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