レンズ越しの君へ
「あたしは、もう廉だけのものだよ?」


あたしが言うと、廉はため息をついた。


「そうじゃねぇよ」


わかってる……


わかってるけど……


でも……


「お前は何も心配するな」


そんな事は無理だと戸惑いながらも、渋々小さく頷いた。


「あ、嵐には連絡しとけよ」


「うん……」


ため息混じりに返事をすると、廉はベッドルームに向かった。


あたしは重い気持ちのまま、嵐に電話を掛けた。


そして、『明日廉と一緒に実家に行く』と言う事だけを告げて、電話を切った。


廉への不安を抱えた上で実家に行くなんて、あまりにも気が重過ぎる。


その夜、あたしは中々寝付けなかった。


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