レンズ越しの君へ
長い長い沈黙を先に破ったのは、廉だった。


「俺、風景専門だから」


彼はそれだけ言うと、あたしからパッと視線を逸らしてしまった。


意外な言葉だった。


何となくだけど、廉ならあたしを撮ってくれそうな気がしていたから…。


気まずい空気が流れる。


だけど…


あたしはどうしても諦めきれなくて、廉にもう一度頼んだ。


「専門じゃなくてもイイよ。廉に撮って欲しいから」


自分でも驚く程、素直な言葉が出た。


それでも廉は首を横に振るだけで、あたしを撮ってくれようとはしなかった。


「どうしてもダメ……?」


「あぁ。俺は絶対に人は撮らない」


廉はキッパリと言って、またカメラ越しに海を見つめた。


あたしは結局、彼が写真を撮り終えるまで誰もいない海岸を散歩していただけだった。


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