レンズ越しの君へ
廉は唇で苺を挟むと、あたしの口からそれを奪った。


彼は、またあたしを見ながら意地悪な笑顔を浮かべると、向かい側の席に戻った。


キスよりも恥ずかしい廉の行為を理解した途端、さっきよりも顔が真っ赤になるのがわかって、そのまま何も言えずに俯いてしまった。


周りから集まっていた視線の事なんて、今は全く考える余裕が無い。


ただただ恥ずかしくて、それ以上パフェには手を付けずにずっと俯いていた。


その間、廉がどうしていたのかわからない。


カップとソーサーが鳴る音で、何度かコーヒーを飲んでいる事はわかったけど、彼を見る事が出来なかったから…。


「お前、もう食わねぇの?」


廉に訊かれても、ただ小さく頷く事しか出来なくて…


「じゃあ、出るぞ」


そう言って席を立った彼の後ろを、あたしは俯いたまま付いて行くだけだった。


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