姫取物語
第弐拾伍夜
キン! と鉄同士がぶつかる音がして、その後に砂を磨る音がする。剣が砂の上を滑る音が聞こえないあたりこの手合わせ、なかなか互角のようだ……。

「智隼さん、腕が上がりましたね」

「そういう雅人さんこそ……以前もお上手でしたが、さらに」

「またまた……」

「秘密の特訓でも?」

「いえいえ、昔の感覚が戻ってきただけですよ」

「完全に戻った頃が怖いですね……」

「俺も完全に戻った頃が怖いです」

「それでは、俺も負けないようにしなきゃですね」

「おや、そのままで良いのに……」

「……」
< 203 / 210 >

この作品をシェア

pagetop