久遠の想い人
「ほら、あと1分!」


「えっ!」



考え込んでいるうちに、あっという間にその時は訪れる。


確か去年も同じだったなぁ、なんて思ってみる。



去年のこの日は絶望だけがただ心に広がっていた。


早くこの世界から、消えてしまいたかった。

この世界が嫌いだった。

愛着なんて持てなかった。



でも今は、あの日からは違う。



この乱れ始めた世界の中でもっと生きて生きて、生き抜いていきたいと思う。



幕末よりも情報が飛び交うこの時代の方が、あの人達のことをより知れる。

もっと近くに感じられる。



あの人達が知ることができなかったこと、遅くなって知らされたこと。


それら全てが、現代に生きる私には派閥を問わずに把握できるんだ。



だから今はもっと生きて、もっとあの人達のこと、あの時代のことを知りたいんだ。




「……10秒前!」



隣で麗奈がカウントダウンを始める。


同じことを願っても、きっと同じ時には戻れない。


だからせめて、あの人に会わせて――――…


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