久遠の想い人
それを取り出し、手のひらにころばせると、静かに鳴った。



「私、幕末に行きたい……って、願ったの」



そう言うと、麗奈は口をぽかんと開けて私を見つめた。

驚かないと言ったのに、麗奈はそのまま暫く静止する。


ぎゅっと手のひらの鈴を握り締め、微笑んでみる。



うん、確かに私は幕末を“生きた”んだ。



私が教室に戻ろうとして動き出しても、まだ動かない麗奈。



「ちょっと待って!何それ、どういうこと?」



だけどすぐに追いかけて来ては、不思議そうな形相でそう問われる。


不思議に思うのも無理はない。


私だって、初めはそう簡単には全てが信じられなかった。



「確かに行ったの。だって、ちゃんと人が生きてた――…」



一つの目的の為に、団結して、鬼のような目をして戦っていた。


最期まで護りたい気持ちを捨てない人がいた。


鬼と呼ばれる人にも、温かみがあった。



普通に恋も、していた。



「全部、本当のこと!嘘みたいだけどね」


「夢、みたいだね……」



ふっと気づかれないように微笑む。



さっきあったことなのに、もう遠い過去のように感じてしまうことが、どこか寂しくて。




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