青空応援歌
「柚ちゃん!」
また、先輩の声に反応してぴたりと止まる私の足。
今度は驚きを隠しきれなかった。
「あれ。違った?」
「いや・・・合ってます」
あまりにも私が目を丸くしていた所為か
先輩は不安そうに確認をしてきた。
「・・・覚えてくれてたんですね、名前」
「うん。早川柚ちゃん」
「五十嵐渉先輩」
「あ。覚えててくれたんだ」
先輩があんまり嬉しそうに笑うから
まじまじと見ることができなくなって
私はローファーのつま先に視線を落とした。
ゆっくりと先輩の自転車が近づいてくる音がする。