Strawberry & Chocolate
No.10 お気に入り~柳人side

立ち入り禁止の扉。





昼休みもそろそろ終わる。



生徒たちも自分のクラスへと戻っていき、人気がなくなるのを確認して俺は、ポケットからヘアピンを取り出した。




つくづく今の教師は生徒を甘く見すぎている。



こんくらいの鍵なんざ1分もかかんねえで開けられるっつーの。





いつものようにヘアピンを伸ばし鍵穴に差し込んだ。





…けど、すでに鍵は開いていた。





誰だ…?



…屋上に来るやつなんて…。






…………………いるな。




俺はそっと屋上の扉を開けた。




いつものように少し強い風が吹いている。




その風が歌声を運んできた。





ここでしか聴けない歌。





…めずらしいな。



あいつが昼休みから来るなんて。








「また何かあったのか?小梅」





長い菫色の髪をなびかせながら小梅は俺のほうを振り向いた。






「柳人っ!?いつからそこに?」



「今。つか、教室戻んなくていいのか?5限目始まるぞ」



「あぁ、いいんです。私、次の時間は頭が痛くなるって言う予定ですから」






そう言って悪戯に笑った。





どんな予定だよそれ…。

< 55 / 266 >

この作品をシェア

pagetop