ラストメッセージ
第十八章 ラストメッセージ
翌日はいつもよりも早く起きて、ランニングを熟した。
美乃がいなくなってからずっと、まるでモノクロのような色のない世界で生きてきた。


だけど、今日からは違う。
俺は、もう大丈夫だ。


俺の好きな朝の景色が、綺麗に色付いて見える。
今日はきっと、今までで一番気持ちのいい朝だ。


ランニングのあとはいつも以上に朝食を食べ、急いで職場に向かった。
現場にはまだ親方の姿しかなく、深呼吸をしてから力いっぱいの声で言葉を紡ぐ。


「おはようございますっ‼」


勢いよく顔を上げた親方の目は見開いていたけれど、親方はすぐにニカッと笑った。


「おうっ! やけにいい顔してんじゃねぇか!」

「はいっ!」

「その分だと、もう大丈夫みたいだな!」


ずっと心配してくれていた、親方。
胸いっぱいの感謝の気持ちを込めて、頭を深々と下げた。


「心配掛けて、すみませんでしたっ‼ 今日からまたお願いしますっ‼」

「当たり前だっ‼ 今まで、誰がお前の分まで動いてたと思ってんだ⁉ 今日からしっかり埋め合わせしてもらうからな! 覚悟しとけっ‼」

「はいっ‼」


笑顔で返事をし、親方に背を向けて作業の準備を始めた。


「やっと、泣けたみてぇだな……」

「へっ? なにか言いました?」

「お前だけ今日から毎日残業だ、って言ったんだよっ‼」


聞き取れなくて首を傾げると、親方は意地悪そうに笑ってから俺に背を向けた。
仕事を辞めた時も、また仕事に復帰した時も、親方はずっと俺のことを見ていてくれた。


俺のことを心から心配して本気で叱ってくれた親方の背中に、俺はもう一度頭を深く下げた――。

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