REVERSI

不穏な空気を察するかのように声を上げたのはマスター。


「あ、『久瀬さん』」


…はい、存じてます。当たり前のようにカウンター越しに彼をにこやかに紹介してからマスターはあたしを隣に促す。



あたしは、



思い切り息を吸い込んでから、ゆっくりと吐き出した。




もう、彼の隣に座るしか選択肢はない事は状況で分かる。


もう、やだ。帰りたい。



子供みたいに泣き出したい衝動はグッと堪えてあたしは覚悟を決めた。




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