REVERSI

もしも違う出会いがあったとしたら、なんて柄にもなく考えた。違う出会いなんて在る筈ない。一穂と付き合っていたから、僚と出会った。あの日会う事がなくてもいつかは僚に出会ってた。





僚があたしを見つめているのが分かる。あたしは指先に視線を落としていて、やっぱり前を向けなくて、どうして彼と過ごした時間は極短いものなのにこんなに意識してしまうんだろう、と思う。



「…聞いてもいいか」


僚はあたしを見つめたままであたしもそれに引き寄せられるように、僚を見つめた。



空のグラスが、寂しい。





「あの時選んだのは、どっちだ」




その瞳に映る切ない色をこの人は知っているのだろうか。


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