やくざと執事と私【第3部 上巻:ラブ&マネー】
「あの~、やっぱり、組長、木村屋の牛丼持ってくるまでドア開けないっていうんで、この際、木村屋の牛丼、出前とりませんか?その方が手っ取り早くかたがつくと思うんですけど?」
私は、加藤刑事に提案する。
「そうしたいのはやまやまなんだが、あいにく今日は、木村屋は定休日でな。」
残念そうな表情で右手で頭を掻きながら答える加藤刑事。
「そうなんですか・・・」
私は、加藤刑事の言葉を聞いて残念そうな表情になる。
「・・・別に木村屋が定休日でも問題ないのですよ?」
「えっ?」
私は、意味がわからないといった表情で執事を見た。
「大和には、木村屋の牛丼を木村屋の牛丼と判別できる舌は持ち合わせていませんから。」
笑顔で私を見る執事。
私も、執事の説明で執事がいいたい意味がわかった。
「つまり木村屋の牛丼でなくて、別の牛丼でも組長には、判別できないってことですね。」
「その通りです、小夜さん。」
うなずく執事。
「なるほど。早速、他の店の牛丼の出前をとるか。」
加藤刑事は、そう言うと、どこかへ歩いて行った。
「・・・・・ところでずっと気になっていたんですけど、なんで加藤さんは、龍一さんのこと、くそ餓鬼って呼ぶんですか?」
私は、加藤刑事の姿が見えなくなったところで、ずっと気になっていたことを執事に尋ねた。
「・・・そのことですか・・・」
執事は、少しうれしそうに微笑みながら、つぶやく。