やくざと執事と私【第3部 上巻:ラブ&マネー】
「近づくな、小夜。・・・・俺は、もう誰も信じない。」
今まで聞いたことのないような組長の悲しそうな声が、私の耳に届く。
「・・・いったい、どうしたんですか、組長?」
バタンッ!
私は、心配になり、再び、組長に声をかけたが、組長は、そんな私をほおっておいて、牛丼を持つと取調室の中へと戻っていった。
タタタッ
私は、組長が取調室に戻って、すぐにドアの前に駆け寄って、ドアに向かって声をかける。
「組長!みんな、心配していますよ?」
「・・・・みんなって誰のことだよ?」
取調室の中から、組長の声が返ってきた。
「それは、龍一さんやサブさん、それに、真木さんも悪かったと思っている・・・はずですし、なにより私自身が心配です。」
「・・・・ヒナタのところで、1秒間があったってことは、ヒナタ、本当は反省してないだろ?」
こんな時だけ妙に勘のいい組長。
「そ、そ、そんなことないですよ・・・(たぶん)」
私は、心の声が出ないように苦労しながら返答した。
「・・・・・・・・・なんか、今、語尾にたぶんってついたように聞こえたぞ・・・・。」
「ウッ・・・・。」
嫌になるほど、今の組長の勘は鋭い。