やくざと執事と私【第3部 上巻:ラブ&マネー】


すぐに取調室のドアが開き、周辺を警戒しながら、組長が姿を現した。



そして、素早く床の上のコップを手に取ると、取調室の中へと戻っていった。



ドンドンドンッ!



「組長、オレンジジュース渡したんだから、出てきてくださいよ。」



私は、ドアを叩きながら呼びかけた。



「小夜、まだまだ、甘いな。交渉や恋愛において、相手に有利な状況を作られたら、それだけで負けたようなものなのだよ。今回は、俺に選ぶ権利を与えた時点で小夜の負けは決まっていたも同然なのだ。」



完全に勝ちを確信している組長の声。



「ということは、オレンジジュース渡したのに出てきてくれないんですか?」



私は、悲しげな声で組長に確認をする。



「残念だが、小夜、それが現実だ。小夜も今回のことは、いい勉強になっただろう。人を気軽に信じてはいけないのだ。・・・オレンジジュースだけは、美味しくいただくよ。」



「そうですか・・・それは・・・残念です。」



私は、苦虫を潰したような表情でつぶやいた。



それは、悲しみを堪える表情でそうなったのではなく・・・・別の感情を抑えるためになった苦虫を潰したような表情だった。



それから、必ず、起こりうる、想像しうる未来。



そして、それは、すぐに起こった。

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