やくざと執事と私【第3部 上巻:ラブ&マネー】
「お、・・・・俺、間違っていたよ・・・・。」
組長の目に水が浮かんできた。
その水は、目の端で集まり、涙となり、組長の頬を適度なスピードで、痕跡を残しながら重力に引かれて、落ちていった。
「それでは、今回の事件の詳細を話してもらえますか?」
「それとこれとは、話が別。」
一瞬で涙が消え、無表情になる組長。
「紅茶欲しいのですよね?」
「・・・少なくとも紅茶くれなきゃ話さない。」
懲りない組長。
今度は、執事に先ほど私に言ったことと同じようなことを言った。
「・・・ふぅ、仕方ありません、小夜さん、紅茶をもう2杯、入れてきてもらえますか?」
そんな組長の様子を温かく見守りながら、執事は、私に声を掛けた。
「かしこまりました、龍一さん。」
私は、久しぶりのような執事とのやり取りにうれしくなりながら、すぐに行動に移す。
ただ、厳密にいうと、ここは警察署。
当然、私が、紅茶を2つ自由に用意できるわけはなく、取調室を出て、その周辺にいる女性警察官の方にお願いするのだけど。