耳のない男


──大抵の人はそこで申し訳なさそうな顔をしたり気まずい感じで黙りますよ。


微笑みを浮かべた彼は手指の動きを止めて、私の手元で空になっていたロックグラスを見た。


──おかわり、いかがですか?


──あ、あぁ。頼むよ。


男はくるりと背を向けて別のスタッフに声を掛けた。
そんなに混んでいない平日の店内、おかわりの焼酎はすぐに空のグラスと交換される。


私がそれをゆっくりと一口喉に流し込んだのを見計らってか、再び男は口を開いた。


──面白い話をしましょうか。




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