名も無き花
残業が終わった。


午後22時

駅まで走った。

22時15分

電車に飛び乗る。
こんな時間でも意外に高校生が多い車内。皆一人らしく、ケータイをいじったり、本を読んだり、寝たりしている。

私鉄だからそれも無理ない。大体は大きな駅で別れてしまうだろう。

電車を乗り継ぎ地元の駅

23時20分

さすがにこの時間だと路上のテレビも消えている。

いつも寄る居酒屋を素通りして家に帰った。

妻の小言を無視して、テレビを付ける。

午後23時50分

まだ終わってない。
私はドラマ『ファーストキス』の続きを見ながらソファーに身を預けた。

スーツを脱ぐ事も忘れて画面を凝視した。

別に、内容が特別好きなわけでもないのだが…。


午前25時


エンディングテーマが流れている。
どっと疲れた。

首を反らせて上を見る。
天窓から満月が覗く。

その幻想的な輝きと、寂しげなエンディングテーマに眠気を覚えた。


フェードアウトする意識の中に朝の青年がふと浮かんだ。
なぜだろう…。

考える間もなく意識が薄れる。



気付いたら終わってた、私の一日。
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