私の彼氏はバッテリー

降りる駅に着いた頃には涙は止まっていた。


「ごめん、せっちゃん」

手を合わせて謝る。

「ううん、落ち着いた?」


「……うん」


帰路につく2人。



夕日が沈み始め、その逆の空は暗さが増してゆく。



「今日言うの?」

ユミは頭を振る。
「今日は言えない…」


「そう」


しばらく歩き、分かれ道に来た時。


「ー明日言おうと思う」

「頑張って」


せっちゃんはニコリと微笑み、バイバイした。



街路に街灯がつき、その中を歩くユミ。


頭の中では、彼の事でいっぱいだった。


今もまだ耳に残っている、あの声。


『しまっていこうぜぇぇえっっ』




彼らしい声で、彼らしくなかった声。



痛いはずの足を抱えながら、必死にキャッチャーとしての仕事をこなし、結局その間は1点も許さなかった。



数々ある今日の彼のプレー。



『ーこのまま付き合うつもり?』




………リョージ……

もう、家の前に立っていた。



晩御飯を済ませ、部屋に入り、彼からの連絡を待つために、携帯を手に持つ。




ーその日、彼から連絡はなかった。
< 21 / 26 >

この作品をシェア

pagetop