初恋

かみなり

結局、結婚式の招待状には、出席に○をつけて返送した。


式まであと一ヶ月をきっている。

これ以上先延ばしにするのも迷惑だから、と、アキとふたりで出席することにした。



そしてなによりも――

あたしは、現実と向き合わなきゃいけない。


雄太のためにも、あたし自身のためにも。







いよいよ梅雨らしくなってきた空を見上げた。

深く立ち込めた灰色の雲は、なかなか流れていかずに今にも雨を降らそうとしている。


――折りたたみ持ってきてよかったなぁ。


あたしがバッグの中の、折りたたみ傘の感触を確かめたとき。


ぽたり、と――空から落ちてくる雫がひとつ。


「――よかった」


同時に、曇天を仰いだあたしの視界を真っ赤な何かが遮った。


「雨降ってくる前に間に合って」


後ろに、赤い傘をさした雄太が立っていた。


「――雄太、どうしたの。その傘」


雄太とはあまりに不釣り合いなその色に、あたしは思わず笑ってしまった。


「実家の母ちゃんがこの前うちに来て――この傘置いて、間違えて俺のビニ傘持って帰ったんだよ」


さした傘がかすかな光を通して、雄太のほほを染めていた。


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