初恋

――雄太の目は怖い。


その静かな瞳に、

なんでも、見透かされてしまいそうで。


「――ねぇ」


雄太が甘えるような声をあげた。


「キスしていい？」


照れもせずに微笑む雄太には、やっぱりかなわない。


「...うん」


あたしが小さくうなずくと、すぐに雄太のくちびるが重なった。

でも慣れない口紅のせいか、すぐに恥ずかしそうに雄太が顔を離した。


「なんだか、キス――しづらいね。口紅って」


うつむいて、うん、とうなずいたとき――

頭の中に浮かんだのは、やっぱり先生だった。



もしもほんとうに、雄太にあたしの心を透視する力があったなら、

雄太は、あたしのことをどう思うのだろう。



軽蔑して、あたしのこと罵って――

あたしを、嫌いになってくれるだろうか。



「これ、毎日つけるね」


そんな馬鹿な考えを振り払うように、あたしはまた得意の作り笑顔を浮かべた。


あたしは、雄太のもの。

雄太のことが好きだから。

そう自分に言い聞かせようとしていることに気づいて、あたしはため息をもらした。