僕の街には今日も雨(涙)が降る…。

二、十一年前の悪夢の出来事

 十一年前、飛夏羽の家は借金の返済に負われていた。

 仲の良かった夫婦は憔悴仕切り、毎日が喧嘩の日々となっていた。

 二人の子供は親のターゲットとなり、兄の方は頬に傷を負い、妹の方は肩に
大火傷を負っていた。

 そう、翔太が優都を虐めていた本当の理由と言うのは、飛夏羽を自分の家に
連れ込む為であった。

 真実を知った飛夏羽は、もうこの学校に来る事も出来ない。

 優都たちに近づくことも出来ないのだ。

 何故なら、翔太の父親が政略結婚をさせる気だからだ。

「飛夏羽…」

 飛夏羽が手紙を書いていると、翔太がやって来た。

 飛夏羽は顔を上げ、何も言わずに翔太を見つめた。

「帰ろう。…親父の…命令なんだ…」
「…分かった。」

 飛夏羽は封筒に手紙を入れ、鞄を持つと立ち上がった。

「それに…もう…居れねぇよな…千葉には…悪い事したよ…」
「…如何して…如何してもっと早く…真実を教えてくれなかったの?」
「…悪い。」

 翔太と飛夏羽は急いで教室を出ようとした。

「あれ?物にしたんだ。」

 ドアの近くに溜まっていた新達がこっちを見て笑ってきた。

「物とか言うんじゃねぇよ!」
「な、何きれてんだよ?」

 翔太の突然の怒りに、新は目を白黒させて翔太を見た。

 飛夏羽は無言で竜牙に近づき、白い封筒を竜牙に渡した。

「…これ…優都に、渡してくれるかな?」
「…あぁ。」
「ありがとう…」
「…帰ろう。」

 飛夏羽は頷き、二人は足早に教室を後にした。

 屋上では李麻達がこれから如何していくかを話し合っていた。

「でも…とにかく二人に任せるしかないよ。」
「二人って…飛夏羽ちゃんと…」
「優都君?…だよね。」

 零と純も頷いて了承した。

「でもなぁ、政略結婚なんて…」
「ありえないよね…助けなきゃ。皆の事。」

 一方、優都はと言うと、教室でただ一人、椅子に座っていた。

「千葉君~。一寸話があるんだけど良いかな?」

 克哉と涼が気軽に優都に話し掛けてきた。

 優都が頷くと、三人は教室を出て行った。
< 41 / 73 >

この作品をシェア

pagetop