僕の街には今日も雨(涙)が降る…。
「はぁ…はぁ…ここまで来れば…大丈夫…かなぁ?」
「待て~!」
「え!?ま、まだぁ?何で…」

 飛夏羽は絶望に暮れながらも走り出そうとした。
飛夏羽が走り出した瞬間、後ろでは人の倒れる音が次々と聞こえて来た。
その音に驚き、飛夏羽は振り向いて更に驚いた。

「刹兄ちゃん!?」
「飛夏羽!無事だったんだね…良かった。」

 刹はふらふらしながら飛夏羽の所に来ると、そのまま地面に座り込んだ。

「ちょ、お兄ちゃん!大丈夫?」
「俺はね。…あれ、その子…」
「え?あ…」

 子猫はずっと飛夏羽を追いかけてきていたのだ。

 飛夏羽が優しく笑うと子猫は飛夏羽に擦り寄ってきた。

「もう…人懐っこい猫だなぁ…」

 飛夏羽は涙を流しながら笑い、猫を抱き締めた。

「…飛夏羽。」
「ん?」
「翔太の家の奴等が動き出してる。母さんも…何をするか俺でも分からない…
だから逃げて。お願い。出来るだけ…逃げて。」
「でもそれじゃあ…お兄ちゃんは?」

 刹は俯いて首を横に振った。

「それじゃあ駄目だよ!お兄ちゃんも…」

 刹は微笑んで飛夏羽の頭をそっと撫でた。

「お兄ちゃんは何時でも平気。それに、妹を守らなきゃお兄ちゃんの意味が無
くなっちゃうでしょ?お兄ちゃんに任せなさい。…何時も…そう言ってただ
ろ?」
「お兄…ちゃん…」

 飛夏羽は目から大粒の涙を零して刹に抱きついた。

 刹も飛夏羽の震える肩をそっと抱き締めた。

「…でも…お兄ちゃんも…無理っ…しないで…だって…私の…たった一人の…
家族…だもん…」
「…分かってる。」

 刹は飛夏羽を立たせると後ろを振り向いた。

「後は俺が何とかするから。だから飛夏羽は出来るだけ逃げて。」
「…分かった。」
「それと…この子もお腹空いちゃってるみたいだし。」

 刹はくすくすと笑って子猫の頭を撫でてやった。
飛夏羽も子猫を見て優しく微笑んだ。

「…後でね。」
「ありがとう…お兄ちゃん。」

 刹は頷いて学校へと走って行った。

 飛夏羽は子猫を抱き抱え、家へ急いで戻って行った。

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