千恋 第1部
「なんで?」
頭が……ついていかない
「うちのばあちゃんがさ…病気で倒れたって…だから……行かなきゃ…」
知ってる…
翔也がおばあちゃんっ子って事。
わかってる…
小さい頃、お父さんもお母さんも毎日仕事で帰りが遅くて…
翔也はおばあちゃんに育てられたって事。
そうだよね…
そんな大事なおばあちゃんが倒れたら…会いに行かないとね…
私、嫌な女だよ…
全部知ってるのに…
わかってるのに…
後押ししなきゃいけないのに…
心の中では、
『行かないで』
って叫んでる。
「……早く…おばあちゃん、元気なって欲しいね…」
「……うん…」
「……ごめん…泣かないで……」
私の目から…
次々と涙がこぼれる…
この涙が…
翔也を困らせるんだよね…
でもとめられない…
とまらないよ…
「…私は…大丈夫…」
言葉が見つからない…
いつも困らせてばっかで
ごめんね…
ごめんね、翔也…