プラチナの誘惑
昴に求められるがままに流されるしかできなかった。
唇と指先から落とされる初めての悦びは、私の心も身体も昴から離れられなくする麻薬で。

昴がのぼりつめる時に見せた苦しげな瞳と吐息はこの先抱えていくに違いない私の哀しみを予感させた。

『忘れられない女』

『本気の女』

一度抱かれたくらいで超えられるとは思わない。

昴の心に住んでいる人を忘れさせるなんて自信もない。

それでも…気づいてしまった。
昴に向かう私の気持ち。
好きだから、側にいたい。
いつの間にか…昴の気まぐれなキスが嫌じゃなくて。
真面目に仕事に取り組む姿を目で追って、ふざけた態度と言葉で女の人とじゃれあう姿に落ち込んで。

初めてたどる自分の気持ち。
この歳になって…初恋なんて。

昴にとって、どうしたら誰よりも大切な愛する唯一になれるかなんてわかるはずもない。



< 167 / 333 >

この作品をシェア

pagetop