プラチナの誘惑



マンションの前には、植え込みにもたれながら立っている昴がいた。
小椋さんが昴の前に車を止めた時、はっと体を起こして近づいてくる表情は暗くてよく見えないけど…私の緊張はマックスで、なかなか動けずにいた。

「下で待つように昴にメールしといたの」

日和の言葉にも、ただ頷くしかできなくて。
昴がどんどん近づいてくるのに比例して、鼓動の跳ね方も大きくなっていく。
何をどんな顔で言えばいいんだろう。
携帯に残ってたメールには穏やかな文しかなかったけど…勝手に逃げ出した私の事、良く思ってるとは思えない…。

後ろ向きな思いばかりを頭にぐるぐるさせながら俯いていると、

ガチャッ

扉が開いた。
昴は、膝の上の手をただ見つめる私の頬を軽く撫でながら

「おかえり」

優しくそう言った。

ほんの少し震えていた声は、私にはとても暖かく愛しく思えて…

泣きそうになった。
< 254 / 333 >

この作品をシェア

pagetop