プラチナの誘惑
マンションの前には、植え込みにもたれながら立っている昴がいた。
小椋さんが昴の前に車を止めた時、はっと体を起こして近づいてくる表情は暗くてよく見えないけど…私の緊張はマックスで、なかなか動けずにいた。
「下で待つように昴にメールしといたの」
日和の言葉にも、ただ頷くしかできなくて。
昴がどんどん近づいてくるのに比例して、鼓動の跳ね方も大きくなっていく。
何をどんな顔で言えばいいんだろう。
携帯に残ってたメールには穏やかな文しかなかったけど…勝手に逃げ出した私の事、良く思ってるとは思えない…。
後ろ向きな思いばかりを頭にぐるぐるさせながら俯いていると、
ガチャッ
扉が開いた。
昴は、膝の上の手をただ見つめる私の頬を軽く撫でながら
「おかえり」
優しくそう言った。
ほんの少し震えていた声は、私にはとても暖かく愛しく思えて…
泣きそうになった。