プラチナの誘惑



「あ…真田さん…」

「真田さん?…アマザンの?」

遅い朝食をとりながら、今日これからどうしようかと話していた時に思い出してしまった。

「真田さんがどうした?確認漏れでもあったか?」

テーブルの向かいでコーヒーを飲みながら怪訝そうに首を傾げる昴。

v字の黒いシャツとジーンズを身につけた昴は、夕べあんなに激しく私を抱いたなんて嘘のように
穏やかな笑顔で過ごしている。
反対に私の体は、私の体じゃないみたいに…
まだ昴の指先の動きを残したままで、普段感じる事のない場所の痛みにも顔をしかめそうになるのに…。

経験の差なのかな…。
昴以外知らない私の気持ちはほんの少しだけ落ちてしまう…。

「…彩香?」

「あ…ごめん。ぼんやりしてた…」

私の目を覗き込むように体を寄せる昴に力無く笑って。

「真田さんだったの。
今日のお見合いの相手」

「…見合い…まだそんな事言ってるのか?」

思いがけない冷たい声にビクッと体は小さくなるけれど、そんな声でも昴にとっては自分の感情を精一杯抑えているのがわかる。

…気分を害しているには違いないけれど。

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