僕の明日みんなの明日
明日も明後日も
僕はお父さんの病室の前でずっと言いたいことを考えている、看護婦さんがもうすぐお父さんが起きるって言ったからだ。けれど、思いつく言葉じゃ気持ちを全部伝えきれないし、詳しく説明したら思い出話も混ざって長くなっちゃうしで困っていた。ありがとうじゃ伝えきれない、ありがとう以外伝えられなかった。

『お父さんが目を覚ますわ。』

看護婦さんが言った。僕はドキっとして看護婦さんを見た。

『どうしよう、言いたいことありすぎてまとまらないよ。』

『落ち着いて。考えることも、まとめることも必要ないのよ。あなたの心が感じることを言えばいい、きっと伝わるわ家族なんだもの。』

看護婦さんはそう言って笑いかけてくれて、僕の背中を押して病室の扉に近づけた。僕は唾を飲み込んでから扉をすり抜けた。何度も来たお父さんの病室、今はいつもより部屋が広くて明るく感じる。

お父さんに近づいて顔がよく見える所まで行くと、ゆっくりとお父さんの目が開いた。お父さんはボーっとしていて、まだ意識がはっきりしないようすで天井をじっと見ている。少しして目がキョロキョロ動いて辺りを見回し始め、僕と目があった。

『・・・浩太?』

お父さんはゆっくりと僕の名前を呼んだ。

『お父さん。』

『ここはどこだ?』

『病院だよ。』

『病院?なんで病院なんかに?』

お父さんは強盗がきたことも、自分が刺されたことも覚えてないみたいだ。当然僕が死んだことも覚えているわけない、僕が幽霊だってことも気付いてなかった。
< 63 / 69 >

この作品をシェア

pagetop