僕の明日みんなの明日
しばらくお父さんは同じ格好で泣き続けている。だけど僕にはいつまでもこうしていらる時間がないから、僕は重い口を開いた。

『ありがとう、お父さん。僕の為に泣いてくれて。血が繋がってないのに今まで育ててくれて。』

お父さんは僕の言葉に驚いて、はっと顔を上げた。

『知っていたのか?いつから?』

『死んじゃったあと。歩君って言う幽霊が見える友達がいてね、歩君がお母さんから聞いてくれたんだ。』

『そうか、すまなかったずっと黙っていて。辛かっただろ?』

『ううん、全然。そりゃあ驚いたけど、辛いなんてことなかった。お父さんが僕を大切に想ってくれてるって知ってるもん。それに何があっても僕のお父さんはお父さんだけだよ。』

『浩太…。』

やっとありがとうって言えた、そう思ったら僕の手が薄くなって消えていってる。不思議と怖くなかった、むしろ安心した。

『それじゃあ、僕そろそろ逝くね。』

僕はそう言って消えかけの手で手を振った。お父さんは僕の手を見て驚いてベッドから降りようとしていた。

『駄目だ浩太、行かないでくれ!幽霊でも良い、これからも一緒に暮らそう?』

それは僕が一番嬉しい言葉で、一番聞きたくなかった言葉だ。僕は泣き虫だから目頭が熱くなるのを感じた。

『ごめんね、それはできないんだ。僕が近くに居たらお父さんの生きる力を吸い取ってお父さんを弱らせちゃうんだ。』

震える声で真実を話した。

『そんなこと気にするな、父さんはこう見えても体力には自信あるんだ。』

お父さんはいつでも僕が喜ぶ事を言ってくれる。それが嬉しくて、哀しくて、寂しかった。僕は最後にもう一つ言いたかったことを最高の笑顔で言えた。

『お父さん、大好き。』
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