僕の明日みんなの明日
僕はただその場で泣きじゃくるばかりで、また何も言えなくなってしまった。歩君は僕を椅子に座らせて隣に座って話し始めた。

『なぁ、初めて会ったときのこと覚えてるか?転校初日で緊張して教室に入ったのにマヌケ面の幽霊がいたんだぜ、緊張の糸も切れちゃったよ。』

歩君の余りにも失礼な言葉に涙は止まり、僕は言い返した。

『そっちこそカッコつけてたじゃんか。』

歩君は言い返した僕の頭を軽く叩いて2人で笑い合った。それから夏休みのことを話した。

『本当に色んなことあったよな、幽霊を成仏させた夏休みなんて初めてだった。』

『僕もだよ、でも僕の最後の夏休み今日で終わっちゃった。』

『浩太・・・。』

僕の言葉で歩君だけじゃなく、僕自身も落ち込ませた。本当に終わりなんだよね、人生最後の夏休み。だんだん寂しくなっていく僕に歩君は言ってくれた。

『最後なんかじゃねぇよ、また生まれて夏がきて・・・また逢える。』

『逢えるかな?ううん逢えるよね!』

『ああ。浩太のこと覚えてないかもしれない、浩太だって気づかないかもしれない、だけどきっと逢える。』

『そうだね、歩君となら記憶がなくても仲良くなれるよ。』

頭が覚えてなくても心が覚えている。だって、僕らの心は繋がっているから。



そして浩太は笑いながら消えてしまった。けど、さよならは言わない。

『またな、浩太。』

教室の窓を開けて空を見上げた。一匹のセミが俺の目の前を通り過ぎて、太陽に向かって飛んで行く。その姿は天国に向かって羽ばたく浩太のように思えた。


―完
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