ラブリーホーム*先生の青③




先生のガッチリした肩を
揉んでると



「そういえば
私って、男の人の肩を揉むの
先生が初めてかも」


「ん?あー、そうか」


高校まで母と二人だったし
祖父母とも疎遠だった


よくよく考えると私
男の人のいない環境で
育ってきたんだなぁ……



「一ノ瀬の父と結婚するまで
母親の恋人も見たことないし
あれ?母親の肩を揉んだ記憶もないなぁ………」


頭の中に
なんとなく浮かんだことを
独り言みたいに
先生の頭のウズマキを
見ながら言った



「お母さんは
昼も夜も働いてたし
記憶にあるのは
寝てる姿が多いかも……」



先生は相づちを打たず
黙っていた


だから、なんだか
自分の記憶の中に
吸い込まれて行く感じがした


子供の頃を思い出すと
いつもそこは薄暗い
よっぽど日当たりの悪い部屋に暮らしていたんだっけ?


それに比べると
先生と青波のいる
ここはまぶしいくらい明るい


……どうして私
ここにいるんだろう
ふと、そんな考えが浮かぶ



その度、指から感じる
先生の肩の弾力だけが
妙にリアルに感じて


……先生の肩を揉んで
感傷的になるなんて


フッと笑うと
先生が訊いた


「なんで笑ってんの?」


「……なんでもないよ」



きっと全然違うけど
きっと同じことを思った



さっき先生も
私と同じく
今、幸せだなって
笑ったんだよね




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