ラブリーホーム*先生の青③




「イ、イチ~、青波きゅ~ん」



寝室の電気を消して
布団にもぐり込み
先生が猫なで声で



「さっきは、えと、ごめんねぇ」



いつもは青波が真ん中の川の字
だけど、今は
先生に背を向けた私が真ん中



私の耳を掴み
眠たそうにしてる青波を抱いて


「さー、ねんね、ねんね」


無視された先生が
ピトッて背中に張り付き
甘えた声を出す


「イチ~」



もう慣れたっていうか
ムカつくけど
仕方ねぇなぁってキモチが強い


「わかったから
もう静かに寝てください」


青波を抱いたまま
寝返りをうち
青波が真ん中の川の字
定位置に戻した



先生は安心したように笑い
腕を伸ばして
青波と私を抱きしめた



「ごめんな、つい……」


「わかってるよ」


気難しいお義兄さんの
ところではなく
家で郁弥くんを預かった
先生の気持ち



エゴじゃない



悪く言えば そうかも
だけど



郁弥くんは もう一人の先生



腹違いの兄と
仲違いしながら育った先生は
郁弥くんに
理想を重ねたいんだろう



兄弟で仲良くしたかった



そんな遠い幼い理想



……先生らしくて
笑っちゃうよ




「郁弥にはさ、短くても
楽しい思い出を
持ってて欲しいんだよね」



暗闇に溶ける
先生の声を聞いて
目を閉じた



まだ目を開いてる先生は
遠い幼い『あの頃』を
見てるんだろう



私の知らない
先生の子供の頃




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