ラブリーホーム*先生の青③




「ねぇ、先生っ!」


青波を寝かしつけた後
アトリエで
持ち帰りの仕事をしてる
先生の背後に立ち



「郁弥くんのお母さんって
……そんなに重い病気なの?」



机に向かい
ノートパソコンの
キーボードを叩きながら先生は



「いいや
子宮筋腫って聞いたぞ?
そんな命に関わるとか
そーゆーのでは……」


「でも、郁弥くん」


「そう、だよな
変だったよなぁ………」


だんだん
先生の声のトーンが落ちる


キーボードを叩く
手は止めないけど
少し丸まった背中が
すごく心配してる



「……朝、学校に送る途中もさ
何を訊いても
大丈夫ですって答えるし……

あんまり、しつこく訊くと
逆に郁弥もガード強くするから
……時間をかけて、
と言いたいけど……

オレたちが家族でいるのには
タイムリミットがある」



「……………」



こういうのを見逃せない性分
先生の背中が
『何とかしたい』って焦ってる



そっと先生の首に腕を回し
抱きついた



……フッ、て先生が笑い
回された私の腕に
手を重ね、ポンポンと撫でた



「……やっぱり、
遠慮とかしてるのかなぁ?」


「多少は、あるだろうな」


「スッゴクよく出来た
出来すぎクンだと
思ってたよ、私」


「………だね」




あの笑顔の裏


まだ出逢ったばかりの私たちが知りたいと願うのは傲慢かな?



それでも
先生は郁弥くんを
家族と思ってる


だったら
私も そう思うんだ



先生の弟は、私の弟


例え、それを抜かしても
青波をひざに乗せ
『お兄ちゃんだよ』って
教えてた あの笑顔が


私は もう好きだった



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