美穂と千夏
0.告白
「私、美穂の恋人になりたい」

 目の前にいる至って普通の女子高生――千夏はそう言い放った。下心の対象となっているらしい美穂は、ついさっきまで彼女と他愛の無い話をしていた。
 こないだの日曜日に駅で怪しい人に付きまとわれたとか――最近発売したアイドルのオリジナルアルバムの3曲目のバラードで泣いたとか――その程度の話だったはずなのに。

「……ちょっと待て千夏。私、女だけど?」

 いくら自分は胸が小さいからってこんな冗談は笑えないよ、と付け加えた。

 自分は確かに胸がない。人並み以下だと自分でも思わざるを得ないと思う。そんな大きさだ。手のひらで包み込んでも、なんとなく余ってしまう。

 それに引き換え千夏はどうだろう。嫌味なほどに胸が大きい。制服を着ているとよく分からないかもしれないが、体操着のTシャツ姿になると、胸がとても強調されるのだ。
 本人はそれを気にしているようだった。町を歩いていると何か視線を感じるとよく言っている。そして決まってその視線は私の胸を見た後に、自分の顔へ移り、どこか品定めをしているようだと。

「美穂、私は美穂が好きなんだ。……その、女同士、だけど」
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