サクラリッジ
そんなある日の夜、もう話す事もないだろうと思っていたビュネから話しかけられたのだ。

PCの電源をいれ、メッセンジャーを起動してすぐのことだった。


「毛布毛布。ひさしぶりー」


まるで今までのことはなかったかのように明るく、自然な態度だった。

幸い、もう私も大分心の傷は癒えていたので、特に深刻な空気になることもなかった。

恋愛経験のない私は、別れた恋人とはどう距離をとるものなのかわからなかったが、いざ自分がその立場になってみると、想像していたよりはずっと簡単だと気づいた。

普通に、当たり前のように友達の関係になるのだ。

互いに挨拶を交わし、近況を報告しあって、ちょっと恋人時代の話も出す。

身構えていた自分がバカじゃないかと思えるほど、現実はあっけないものだった。

怒りに任せてビュネを怒鳴るんじゃないか、ビュネが私の心に決定的な傷を負わせるようなな言葉を吐くんじゃないか。

そんなことを考えてしまった自分が情けない。

「ところで、どうして俺に話しかけてきたんだ？今まで姿を見せなかったし、ただなんとなくってワケでもないんだろ？」

「うんー。実はね・・・」

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表紙・目次

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