サクラリッジ

焉道

彼女が死んでから、私の周りは少し変わった気がした。

何が変わっているのかはわからない。

以前はどうだったのかも、よく思い出せない。

それでも、何かが変わったと思ったのだ。

淋しい気持ちにはなったが、彼女の死を悲しむ気持ちは、さして起こらなかった。

深い付き合いでもないし、恋人だったわけでもなし、顔をあわせたわけでもない。

それなのに、どうしてこうも空しい気持ちになるのだろう。

どうして、彼女の事が頭から離れないのだろう。

愛?
それとも恋?

そのどちらでもない。そういうのではない。

それはわかっているが、それしかわからない。

きっと私の心は、彼女に持っていかれたのだ。
< 54 / 56 >

この作品をシェア

pagetop