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 今度は背の低い一見腰の低そうなヤサ男がやってきた。

 「この台本を読み上げてください。

 多少のアドリブは結構ですが、
この台本の内容が乱れないようお願いします」

 「アドリブ?」

 龍之介は首を傾げる。

 「ここに書かれていること
棒読みすればいいんだよ」

 「おお、そうか!」

 「この内容でよろしいか?
 事前に一度目を通してください」

 「俺はいい!」

 「じゃあ、僕が」

 直哉は黙ってヤサ男が持ってきた台本を読む。

 「あのー、
 なんでオーストラリア産の並カルビにしろって
いうことになるんですか?」

 「この台本は貧乏人タイプ用なんで...」

 「俺たち貧乏だから、ちょうどいいじゃないか。
 俺腹減ったぞ!」

 「待てよ!
 僕は金持ちタイプへの変更を希望します」

 直哉はそう言うと、ヤサ男の顔を見て笑う。

 「あのー、金持ちタイプへの変更ですか?
本当によろしいのですか?」

 「そちらのお客さまは?」

 「俺は任せる!
 それより、早く肉が食いてえ!」 

 龍之介がそう言うと、
ヤサ男は心配そうに直哉の顔を見た。
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