くちづけのその後で
最後まで話して颯斗を見上げた瞬間、彼の瞳に浮かぶ涙に気付いた。


「はや……」


「よく頑張ったな……」


颯斗はあたしの言葉を遮ると、ギュッと抱き締めてくれた。


「でも……これからは俺が守るから……」


「颯斗……」


「だからもう、一人で頑張るな……」


「うん……」


小さく頷いたあたしは、颯斗の背中にゆっくりと腕を回した。


その途端、優しいシトラスの香りに包まれて…


あたしの瞳から、一筋の涙が静かに零れ落ちた。


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