くちづけのその後で
この間の一件があってから、早川さんと会っても頭を下げる程度にしていた。


彼の方からも声を掛けて来る事がすっかり無くなって、あたしは少しだけ安心していた。


「あの、朱莉さん!」


いつものように出勤して来た真子ちゃんは、あたしの顔を見るなり懇願するような眼差しを向けて来た。


「お願いがあるんですけど!」


「どうしたん?」


不思議に思いながら小首を傾げると、一瞬だけ躊躇したような表情をした彼女が申し訳なさそうに口を開いた。


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