【短】雪の贈りもの
*約 束


はぁ。

私はパソコンに向かっていた手をそこで止めた。

開いている画面は、ちょうど1年前に始めた携帯小説サイト。

この場所なら、私も自分の気持ちをありのまま伝え、みんなと普通に会話ができる。

そう、思ったから。

けれど、会員登録してみたものの、恋を知らずに生きてきた私にとって、恋愛小説を書くなんて夢のまた夢みたいなものだった。

結局、放置状態でしかなかった自分のページ。

そこに今日、初雪が出会わせてくれた彼に感じた気持ちを、文章にしてみようと思い立ったんだ。

ひとつずつ、ありのまま。

気持ちを辿るように。

けれどやっぱりつまづく私。

ここまで書き終えてからやっと気づいた。

この話には先がないという事に。

素敵なラストだって存在しない。

現実のラストはもしかしたら、

『今日も500円はポケットの中』

なのかもしれない。

こんなものが、小説として成り立つはずない。

この先をもっと魅力的に書けたらいいのだろうけれど、私はこの先の気持ちを、まだ知らない。

これを“恋”と呼ぶのだろうか……。

呼んでいいのだろうか。


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